2023年7月21日 染織研究会を開催しました。YouTube染織研究会チャンネルで会員限定公開中。
縁蓋・堰出し技法を用いた型染表現の研究」根路銘まり

今回の発表では、まず初めに、現代作家の作品を考察しながら型染・糊防染技法における縁蓋と堰出しの効果について述べ、工程についても解説する。次に、制作実験をする中でこれらの技法をどのように自身の表現に組み込んだのかを発表し、最後に今後の課題と目標を述べる。

沖縄県立芸術大学 博士課程 2年
型染・糊防染技法を用い研究制作をしており、現在は「縁蓋(えんぶた)」と「堰出し(せきだし)」と呼ばれる技法を研究している。将来的には、これらの技法を自身の着物作品に用いる絵羽模様の構成と融合し、独自の表現を確立することを目標としている。

2023年5月17日 染織研究会を開催し,YouTube染織研究会チャンネルで5/26限定公開中。
宮古上布産地状況の変遷と現状仲間 伸恵

沖縄県宮古諸島の織物「宮古上布」は、琉球王国時代の人頭税の歴史を経て、地域の人々との関係を様々に変化させながらも現在まで受け継がれてきました。しかし、現在その継承は厳しい局面を迎えつつあります。本発表では、宮古上布の生産がピークを迎えていた昭和初期から現在までの約100年間の産地状況の変遷を産地からの報告や沖縄県が作成した調査報告などから振り返るとともに、現状についてもお話し致します。

琉球大学教育学部美術教育専修教授

2023年1月20日 第120回Web染織研究会を開催し,YouTube染織研究会チャンネルで限定公開中。
「沖縄県立博物館・美術館及び美ら島財団所蔵の孫億資料の絹本調査について」新田 摂子

本発表では、沖縄県立博物館・美術館と美ら島財団が所蔵する孫億の絵画資料に使われた絹本の素材調査について報告します。この調査は、科研費若手研究「孫億筆《花鳥図巻》における技法研究」(研究代表者平良優季)の研究の一環で行われました。私は、この研究の研究協力者として、絵画資料の絹本の分析を行いましたので報告させていただきます。

沖縄県立芸術大学芸術文化研究所准教授

2022年11月11日 Web染織研究会を開催し,YouTube染織研究会チャンネルで公開中。
「沖縄県立博物館・美術館における模造復元のあゆみ」與那嶺 一子

 沖縄県立博物館・美術館では平成27年から7年間、琉球王国文化遺産集積・再興事業を実施しました。この事業で、8分野(絵画・木彫・石彫・漆芸・染織・陶芸・金工・三線)65件の模造復元を行いました。染織は県内、県外の製作者によって30件(袷の裏も含めると40件)を製作し、これは全体46%、約半分です。
これが可能となった理由は二つあります。
一つは、戦後、伝統的な手技(国、県指定の無形文化財の染織が8件、経産大臣指定伝統的工芸品の13件など)が各地で継承されていたことです。
 もう一つは、当館が、1952年を皮切りに、模造復元を依頼し作品を購入する事業を実施してきたことです。このような歩みが、今回の事業につながりました。
 今回は、当館が実施してきた模造復元のあゆみをお話いたします。

1981年 琉球大学教育学部美術工芸科卒業。専攻は沖縄の織染。
1984年 沖縄県立博物館に勤務(2008年3月まで)
2009年 リニューアルした沖縄県立博物館・美術館に勤務
2019年 沖縄県立博物館・美術館退職・再任用(現在に至る)

2022年9月16日 Web染織研究会を開催し,YouTube染織研究会チャンネルで公開中。
「その染織はエシカルですか?」近藤 幹也

 私は、沖縄県立芸術大学の「繊維科学」の授業で、原料から繊維、繊維から糸、糸から布、布から繊維製品に至る過程についてのお話をしています。
 最近、繊維の原料や繊維製品のクレーム事例などを紹介すると、受講生からSDG‘sやサステナブルに絡んで、エシカルなという観点での質問や課題提起をいただくことが多くなりました。そこで、今回はエシカルファッションについての話題提供をさせていただきたいと思います。

 1960年生まれ。東京都在住。東京都立繊維工業試験場、東京都立産業技術研究センターで繊維関連企業の技術支援業務や研究開発に従事。主にニット関連技術を担当。2000年信州大学で学位:博士(工学)取得。2001年日本繊維機械学会 学会賞技術賞を受賞(受賞テーマ「編地分析・設計支援システムの開発」)。
 現在は、沖縄県立芸大学・同大学院 非常勤講師(「繊維科学」、「織研究」担当)、東京都立産業技術研究センター 顧問・名誉フェロー、日本繊維機械学会 理事・フェロー、文化服装学院ニットデザイン科 非常勤講師(「ニット概論」担当)、東京都産業技術振興協会 理事。

2022年8月19日 Web染織研究会を開催し,YouTube染織研究会チャンネルで公開中。
「類似する那覇市歴史博物館所蔵紅型衣裳と鎌倉芳太郎収集紅型型紙の比較と考察」山田 葉子

私の勤務する那覇市歴史博物館では、2022年3月4日(金) ~ 30日(水)まで特別展『鎌倉芳太郎展~その業績と遺した資料~』を開催した。その中で「王国時代の紅型と鎌倉芳太郎」題し、那覇市歴史博物館所蔵の紅型衣裳3点と、それに類似する鎌倉芳太郎収集の紅型型紙(沖縄県立芸術大学所蔵)3点を並べて展示した。その際、紅型資料と型紙を詳細に実見調査する機会に恵まれた。ここから得られた成果を報告する。

 沖縄染織研究会会員 2012年より那覇市歴史博物館学芸員

2022年7月15日 Web染織研究会を開催し,YouTube染織研究会チャンネルで公開しました。
「ハイオ南風原織研究 - 歴史的背景と織り技法」與座 ジョンロバート

 「ハイオ南風原織」とは、1992年の沖縄三越で開催された個展にて田本成子が発表した創作織物であり、米国で出版された図案集を基に織られた曲線的な柄が特徴である。 本発表では「ハイオ南風原織」の歴史的背景として、田本成子が所属していた沖縄県婦人連合会の活動の一環であった手工芸品展示即売会からはじめ、図案集を手渡したウィリアム・ A・ハイオ神父との出会いについて述べていく。次に田本成子資料に触れ、発表者が図案の柄の再現を試みた織り技法と作品、その際に使用した方法を紹介する。

 沖縄県立芸術大学造形芸術研究科織研究室2年

2022年1月21日 Web染織研究会を開催し,YouTube染織研究会チャンネルで公開しました。
在欧沖縄染織品のヨーロッパへの移動について」新田 摂子

ヨーロッパの博物館に所蔵されている沖縄染織品の来歴について報告する。特に、ヨーロッパに約300点もの沖縄染織品をもたらした、オランダ人美術商Jaap Langewisについて取り上げる。

 沖縄県立芸術大学芸術文化研究所講師

2021年11月19日 Web染織研究会を開催しました。
「金武町屋嘉の芸能衣装の再現制作から考察する紅型技法」渡名喜 はるみ

自身の古紅型技法研究をもとに、沖縄県立芸術大学で取り組んできた再現制作について考察する。染研究室では「琉球王国文化遺産集積・再興事業」の委託を受けて、紅型袷衣装「花色地枝垂桜に垣根薔薇模様衣裳」(ベルリン国立民族学博物館所蔵)の再現制作を行なった。その経験をもとに、独自の古紅型再現制作プログラムを構築した。
金武町屋嘉区に伝わる芸能衣装の再現制作において、これまで紅型衣装制作に伝承されてこなかった技法を再現し、科学分析により色材を確定する事ができた。今回の発表では、再現制作で追体験した多様な古紅型技法について報告したい。

プロフィール:
2015年 二人展「染めを纏う」(當間光子・クラフト&ギャラリー幹 岡山)
2017年・18年 染研究室グループ展 (大阪vow’s space + café)
2018年 二人展「南風を纏う」(坂口智美・熊本伝統工芸館 さいたま市おがわ屋)
2015〜2019 「琉球王国文化遺産集積・再興事業」染織部門監修者 (沖縄県立博物館・美術館)
2016〜2021「りゅうぎん紅型デザインコンテスト」審査員(株式会社琉球銀行)

2021年9月17日 Web染織研究会を開催しました。
「近代沖縄における琉球藍の製藍業を取り巻く社会的背景について」大湾ゆかり

琉球藍の製藍業について、1991年~1996年にかけて実施した藍壺及び藍作農家の調査と文献資料等を参考に、主に明治時代から昭和初期における動向とその社会的背景について考察したことを発表する。今回はとくに明治初期の製藍業の需要拡大と、印度藍・合成染料等が移入した後の製藍業の衰退期における取り組み等の記録を整理して紹介したい。最後に、企画展「沖縄の藍」より現代の沖縄の製藍状況について若干触れることにする。

プロフィール
1988年 沖縄国際大学へ入学。大宜味村等でのフィールドワークで藍壺の存在を知り、その分布調査や製藍技法等について調査し卒論とした。
1992年 筑波大学大学院環境科学研究科(文化生態研究室)入学。引き続き琉球藍の製藍技術について研究し修士論文提出。
1995年より沖縄県公文書館勤務。藍関係の調査は1996年まで続け、その後中断。2013年沖縄県立博物館・美術館へ学芸員として異動したのを機に、再び琉球藍について調査を始めた。
2020年12月~2021年1月、博物館企画展「沖縄の藍」を開催。

2021年7月16日 Web染織研究会を開催しました。
「組踊の小道具について」金城裕幸

組踊は1719年に初めて上演されてから302年が経つ。琉球王国崩壊後、組踊も次第に衰退した。その過程で組踊に使用された小道具も失われ、現存する小道具はハチマチ以外ほぼ無いと思われる。現在の小道具が当時のまま受け継がれているのか、どのように復興したのかなど、組踊の小道具に関する現状をハチマチの構造説明を交えながら報告した。
プロフィール:組踊道具・衣裳製作修理技術保存会 道具技術者
       裕工房 代表者
       沖縄県立技術大学 音楽学部 邦楽専攻1期生
       琉球古典音楽野村流保存会 三線:師範 笛・胡弓:教師

2021.5.21 Web研究会開催しました

「科学者からみた芭蕉布 ー芭蕉布の新しい価値の発見ー 」 野村陽子(OIST)

琉球の人々は、薄くてしなやかな極上のバナナの布、「芭蕉布」を生産する技術を持っていました。
そしてあらゆる階級の人が、夏に「芭蕉布」の衣服を着用していました。
なぜこの布は、沖縄の蒸し暑い夏にこれほどまでに愛用されたのでしょうか。
私たちは、芭蕉布を産み出した先人の知恵を科学的に研究することで、芭蕉布の新しい価値の発見を目指しています。
講演では、「芭蕉布」の材料や繊維の研究を具体的に紹介しました。

 
プロフィール
現職:沖縄科学技術大学院大学サイエンス・テクノロジーアソシエイト
略歴:日本女子大学家政学部被服学科卒業、同家政学修士被服学専攻修了
同博士課程後期人間生活学研究科生活環境学専攻修了、博士(学術)の学位を取得。
東京大学先端科学技術研究センターの博士研究員などを経て、カリフォルニア大学デービス校工学部医用工学科にて
プロジェクトサイエンティスト、2015年より現職。
核酸(DNAやRNA)化学・工学の研究室に所属しながら、芭蕉布の研究も進めている。